コバケン・ワールド vol.11 2015.9.27 in サントリーホール

最初に言っておく、

『涙出た!』

『素晴らしかった!』

 

賞賛の言葉しかありません。

賛辞の言葉しか見つかりません。

 

もし、  

もし、

もしも

あえてケチをつけるなら、

ベルリオーズよりも、小林色が強すぎる・・・・そのことのみ。

 

それすら賞賛・賛辞に値する演奏。

 

まことに素晴らしい。

 

以前、宇野功芳が、バーンスタインウィーンフィルマーラーの5番を録音した時に、

この世に、こんな指揮者がまだいることに感謝したい

 

と、最大の賛辞を送っていた。

 

まさに、今回のベルリオーズ幻想交響曲はそれに匹敵、凌駕する。

 

何よりもここまで、そして極限まで自分の思いをひとつひとつの音に込めて演奏できるその行為。

情念・魂・気骨・気概・・・

感情などといった生やさしいものではない何かが、音化されていくそのまさに

音楽が生まれ出さんとする瞬間。

その瞬間に立ち会えたことに感謝します。

そして、それを体現した日本フィルハーモニー

これもまた素晴らしい。

 

天国のベルリオーズも、微笑んでることでしょう。

 

先生!ゴルフばっかりやって!とかいろいろあるでしょう!

しかし、楽団員にこれほどまでの録音の機会を与えてくれて、

様々な潤いを与える指揮者も他にいないはず。

好き嫌いを超えて、孤高の存在。

 

『なんだかんだ言っても、感謝してます』

 

団員の感情はおもむろこうであるはず。

 

そもそも、今回の演奏会8月30日に、はがきでソリスト変更のお知らせが来た。

中村紘子ショパンから

千住真理子チャイコフスキーに変更。

僕的にはラッキー。

中村紘子の演奏は聴いたことないから、死ぬ前には一度聴いておきたいくらいの気持ち。

しかし、チャイコのVnコンチェルトとはね!

 

大好き!ラッキー!

 

しかし、小林研一郎、日フィルとしては、病状のよくならない中村紘子に対しての

想いがあったようだ。

 

演奏会終了後に小林が語った、

僕のほうが年上ですが、デビューははるかに彼女のほうが先で、いつも叱咤激励されたと。

そんな、存在。

一刻も早くステージに戻ってきてくださいと。

 

コバケンワールドvol.10のマーラーの5番の時には、アンコールも挨拶もなかったのに

今回はアンコールもスピーチもあった。

久しぶりに聞く、あの低音の魅力ある声。

アンコールは、ユーモレスク

 

珍しく、というか初めて見た、ヴァイオリンにテーマを実際に弾かせてその場で指導。

演出なのか、思いつきのアンコールなのか・・・・・

テーマを使ってよちよち歩きから青年へ、そしてやがて人生の終焉を迎える。

何を、この曲に想いを重ねたのかはわからない。

幻想交響曲のテーマでもある

『夢』

にも通じる、大きなテーマを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・やがて、幻想交響曲は始まった。

 

 

幻想のヴァイオリンの透明感のあるまさにフランスの音。

ただただ、立派でした。

最後の最後までその音色は崩さず。フランスのオケに化けたままでした。

素晴らしい。

そして、特筆すべきコントラバス集団。

3楽章のピチカート。

ここの譜面がこれほどまでに暴力的に鳴ったのは聴いたことがない。

僕はバス椅子かコンマスなどが使うピアノ椅子のロックが外れた音と勘違いした。

しかも、コントラバス奏者の腕の動きからはそんな音が出てくるとは

みじんも感じさせないその動作。

12年前にはこんなには弾かせていなかったはず。

『バスッ!』

って感じ!

 

ハンガリー国立響でも日フィルでも聴いたがこんなのなかった。

ファーストホルンも、細い若い女性奏者から放たれる、何とも甘美な音色。

『あぁ、どうか僕と結婚してください!!』

まさに、有名女優への一方的なはかない感情。

それこそが『幻想交響曲』!!

そんな、音色でした。タッチ(タンギング)もやわらかく、うっとりしました。

ありがとう、かわいらしい主席のおねぇさん!!

 

 

そして、出ました。

4楽章!!

まさに、藤原功次郎のトロンボーンコンチェルト!!

『炸裂!』

まさに

『炸裂!』

 

この言葉以外に思いつかない。

自分の語彙のなさを痛感します。

 

断頭台ギロチン寸前のクラリネットは、

ハンガリー国立交響楽団キチガイじみた狂気の凶器クラリネットには及ばなかった。

 

 

鐘も大きめに叩かせて寒々とした雰囲気を醸し出していました。

 

 最後の最後トロンボーンfffの下降音型に差し掛かった時

 

『あぁ、もう終わっちゃうんだ!』

と感じる自分がそこにいた。

 

それがまさに、ベルリオーズの望んだ『夢』そのものだったのかもしれません。

 

最後の和音をぶつっと切って、

 

そして、割れんばかりの大拍手。

 

この舞台に、携わったすべての人にお礼を言いたい。

『ありがとう』

そう、素直に

『感動をありがとう』

 

本当に感動したり、心揺さぶられたとき、出てくる言葉は、シンプルだ!

ソロ奏者はじめ、すべての奏者に敬意の念を払い、ねぎらいの言葉をかけ、

コバケンは、マイクを取った。

はて、12年前はマイク持ってただろうか?

地声だったような気がする。少し年取ったのかな。

 

何しろ、美声である。うらやましい限りだ

 

そして、協賛のロームをねぎらい中村紘子を敬い、ユーモレスクが始まった。

 

先生が、たかが4分の曲ですが・・・と話しておられた。

 

長さではない、深さである。

 

子への愛情と同じ、

 

もう一回言おう。

長さでなく深さだ。

 

まさに、たゆたうようなヴァイオリン。

先生の指、表情、すべてから音符を読み取り音化していくヴァイオリン奏者のみなさん。

ありがとう。人間ってこんなことまでできるのね。

 

音楽ってすごいな!人間ってすごいな!

 

そう、素直に思えた日曜午後素敵なひとときでした。

 

いやぁ、素晴らしかったです。

 

ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 続く                            2015.9.28