『バトルロワイヤル』高見広春

以前、よく参考にさせていただいた、

『書棚』という個人の書評サイトが有り、

今は閉鎖されてしまっているので残念なのですが、

そこで今作品の評価が高く、

えっ?

『バトルロワイヤル』???

本当に良いの??

 

 

バトル・ロワイアル 上  幻冬舎文庫 た 18-1

 

殺戮を繰り返す、くだらない三文小説という認識でした。

それは、映画のイメージだったのかもしれません。

食わず嫌いはいかん、いかんと、

いつかは読もうと思って、上巻のみを購入して3年くらい過ぎてました。

 

たまたま、今回下巻を手に入れることができて、拝読いたしました。

 

日本という設定を外し、なんとか共和国であるとか、金八先生のパロディ、

そもそも、中学生のひとクラスでひとり勝ち(生き)残るまで、

武器を与えて殺戮を繰り返させる。

その導入は、おじさんにしては、ちょっと

『ぷっ!』ってなってしまう。

 

しかし、平易な文章とひとりひとりに与えられた、キャラクターの

わかりやすさで、どんどんとページが進む。

確かに、すぐ人が死ぬ。

これから国を支えていくであろう、中学生が、いとも簡単に死んでいく。

しかも殺し合っていく。

 

そこに、小説にありがちな小難しい解釈や講釈はつけずに、

口語調の文体でずんずんと物語を推し進めていく。

 

デイパックに異なる武器を各自に支給。

この設定はいいですね。

インシテミル』にもありました。

中には、これが武器ですか?みたいなものも。

 

それと、行動できる場所が、時間ごとに制限されていくっていうのもいい!

自分があまり、そういったミステリー小説を読んでいないだけかもしれませんが、

この長い物語の戦闘のルール設定って大事ですよね。

 

武器による差別化、そして、場所による閉塞感が生まれて

よりリアリティに感じられる。

 

各章ごと終わりに、書体変えて太字で残り何人とあるのもいい。

昔からあった手ですかね??僕には新鮮でした。

一定の時間ごとに、放送、発表される、死亡者の名前と立ち入り禁止エリア。

これも、読者を小説の中にぐっと押し込んでくれる。

 

先だって島に住んでた人の生活はどうなったんだろうとか、もはや関係ない。

だって、どんどんどんどん、さくさくと物語(殺し合い)は進んでいくんだもん。

もう、ページをめくる手が止まりません。

首が痛くなってきた。

腕がだるくなってきた。

スルメばっかり食べてたから、部屋がスルメ臭くなってきた。

 

小説でも映画でも、時として前半と後半が違う感じになってしまう作品に出会います。

 

例えば、千と千尋で、湯婆婆に会いに、湖上の電車で湯屋を出てしまう。

そこでとたんに、興味を無くしました。ずっと、湯屋で物語を続けていて欲しかった。

小説ですと、ちょっと古いけれど、

遠い海から来たCoo景山民夫さんの名作です

前半の叙情豊かな物語と後半の核実験やらの血なまぐさい話になってしまって、

あぁあ!ってなってしまった。

なんで、ずっときれいな海での話にしといてくれないのさ!

 

この作品は、一種のクローズドサークルなので、その心配はなく安心でした。

 

ということは、国家指令同様、ずっと殺し合いなんだな、これが。

しかも狭い島の中。

いやぁ、設定勝ちでしょ。

潜水艦映画に駄作なしと言われるように、

クローズした途端名作生まれる予感アリだもんね。

 

しかし、

設定や前進するストーリーは、素晴らしいものの

地理や建物などの状況の描写(説明)がもう少しこなれていれば、

また、シンプルな口語体で読みやすいのですが、

もう少し、文章に、なにか魅力が加われば、

作品自体の

『格』や『品』

につながったのでは、と思います。

 

一方、それはないものねだりであって、

このストーリーにマッチした文章だとも正直思います。

 

登場人物が、どうのこうのというのは、今日読み終えておいて、

僕の脳みその記憶力が殊のほか性能悪く、

もうほとんど覚えてないので、割愛しますが、(っていうか覚えてない)

 

登場人物の設定が非常にわかりやすく、区別がつきやすい。

精神的に発展途上の中学生なら、もっと似通っていてもよさそうだけど、

主要な登場人物のキャラ設定は秀逸。

 

殺し合いの中に、ふと、本来の人間性や情愛を垣間見る暖かなシーンがこれまた秀逸。

 

いわゆる、対比の素晴らしさですね。

 

殺人鬼にも五分の魂ってね。

 

中学生のほのかな恋心っていうのも、非常にいい。品がいい。

 

作者の、そしてこの小説の持っている『前進力』とでも言おうか、

非常に素晴らしい推進力に、身をゆだねました。

 

小説に身を委ねる

 

なんて素敵なことか・・・・

 

ラスト、少し、ぼやかして、続編もありえると思いましたが、

 

ラストの、

盗作だった、いやはや。

ってなんですか?どなたか教えてください。

 

作者の高見広春氏はこの1作で、文壇から姿を消しています。

 

 

虎舞竜のロード『第〇章』ってのもありましたが、

part2、part3で稼げたんではないでしょうか?

あまり、続けるのも愚の骨頂ですが。

 

下世話ですが、映画化され、億単位のお金が入ったことと思います。

そもそも、ものすごく文壇で叩かれた作品でしたので、やる気喪失したのでしょうか?

 

しかし、作家って、書く事こそ命だと思うんです。

 

面白い後日談でも、書いてくれないでしょうか?

 

期待してます。

 

 

 

 

 

 

追伸

文庫版のあとがきは、まさに蛇足です。

本作読了後すぐには、

読まないほうがいいです。僕にとっては、作品の素晴らしい読後感が損なわれました。

 

 

 2016.12.12                         続く