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『超高速!参勤交代』 土橋章宏

実は、相当な傑作です。

 

軽いノリの映画化作品や、

超高速!参勤交代』という輪をかけてノリの軽いタイトルで、

得していることと損していることがあるのでは無いかと思います。

 

得してるのは、もともと脚本として城戸賞を取ってますので、

作品として優れているし、

その映画化により何よりも認知度が高いということ。

映画の続編もありますしね。

 

損してるのは、作品的に、結構真面目に書き上げているのに、

イメージから来る軽さに負けてしまってやしないかということ。

 

僕も、軽く読み始めたのですが、

読んでる最中に、山本周五郎の傑作『樅ノ木は残った』を連想しました。

 

それってすごいよな。

 

伊達安芸、酒井雅楽頭、原田甲斐だぜ!おい!

 

何しろ、人物描写が深く、共感できる点が、素晴らしいです。

 

 

一般的に主人公だと思われる、当主政熱内藤 政醇(まさあつ)。

 

真の主人公、雲隠段蔵。

 

経理部長こと城代家老、相馬兼続。

 

そして、個性豊かな家臣たち。

 

登場場面は少ないものの、非常に大切な役目のお咲。

 

 

そして、悪の権化、松平信祝(のぶとき)

 

段蔵の敵役であったり、北の内藤の殿様だったり、伊達の殿様や、

妹の琴、最期に、話をグッと高尚にしてくれる将軍徳川吉宗

 

 

ひとりひとりに、深く愛情もって書いてくれているおかげで、

読む側としても、他人事ではない感じになります。

 

領主、当主、殿様が、領民と仲良く敬われてるっていう設定は、

読んでてほろっとさせる、大事な薬なんだろうな。

 

流石に段蔵が、死んでしまった時には、一瞬『?』となりました。

主人公だと思っていたので、忍者だし、生き返るかなと思いました。

何しろ、忍者段蔵の心の変遷の描写には感動しました。

大切な役を、さっと殺してしまうのは、脚本家として一流なのでしょう。

 

 

それがあってか、お咲が、なんとか生き延びて、

幸せに暮らしただろう後日談には、心底ほっとしました。

 

超高速! 参勤交代 (講談社文庫)
超高速! 参勤交代
土橋章宏

 

 

仲間って?

友情って?

やさしさって?

ふるさとって?

 

 

人生で大切な、普遍的な問いに作者は、真剣に筆を割いてくれました。

そういう意味では、先日読んだ、『さぶ』に通じるものがあります。

 

 

 

盛り上がりに盛り上がった、最後の決戦途中で、

上手に物語を締めくくってくれたら、いいなぁと思いながら読んでましたが、

 

六日目をあっさり短いページで、徳川吉宗との絡みで、ウルッとさせ、

4ページにも満たない終章が蛇足になるのだけは勘弁してよ!

 

と読みすすめると、

 

さらっとだけれども、

作者の愛のいっぱい詰まったラスト4ページにしてくれました。

 

読後感最高!!!

 

またまた、大好きな本が増えました。

リターンズも面白いといいけど、、、

 

 

 

 

 

 

 

続く                            2017.1.13

 

 

 

追伸

もう少し、時代考証して、タイトルをもっともらしいものに変えたら、

不朽の名作に仲間入りするのではないでしょうか。

藤沢周平ではないけど『密謀』とかね。

それじゃぁ、儲からないんだろうな。

そのくらい、楽しく、感動させていただきました。合掌。