『漂流』 吉村昭
中学生の時に、映画化されたので昔から知ってはいた。
漂流してどこが面白いんだろう。程度だったか。
北大路欣也が、ヨレヨレで歩いている
映画のワンカットが思い出される。
爾来三十年。
感動する本との紹介で、購入。
破獄、冷たい夏暑い夏、法師蝉は読んだ覚えがあります。
吉村昭。
生麦事件、上下巻を本棚に置きつつ、冒頭読むも、難しいので、
なかなか手が出ず。
本書『漂流』は、非常に読みやすく、スラスラ読めます。
時代背景も難しくなく、登場人物も少ないし、状況設定もシンプル。
吉村昭最大の特徴である、
無慈悲なまでの冷徹な文章。
嫌なら読まんでいい!と言っているかのように
感情を排した表現。
好みが分かれるでしょう。
しかし、この『吉村昭さ』がないと、つまらない作品なんだと思う。
だって、漂流するだけじゃん!
淡々と
粛々と
読者に
否
読者の心に、突き刺さってきます。
20頁あまりの『序』の部分。
すでに、読者は『吉村昭さ』の術中にはまります。
何が起きるのか、どうなってるのか、いつなのか、どこなのか、
いま本を読んでいる自分を、
まさに、作品の時代へと導いてくれる『序』
素晴らしい。
ここだけで素晴らしい。
あとは、身を任せ、読みふけるのみ。
えーっ?本当に?・・・・・という部分がなくはない。
しかし、逆境に置かれた人間ならば、
不可能を可能にしてしまうことさえ可能なのだと
考えさせられる。
この便利な時代に生きた人間じゃダメだな。
『便利は人をダメにする』
本当だ。
『漂流』
吉村昭の傑作である。
死ぬまでに、吉村作品、いっぱい読みたいものだ。
2017.2.2 続く